相続の流れ~遺言書がある場合・ない場合~
相続が発生した際の手続きは、故人(被相続人)が遺言書を残していたかどうかによって大きく異なります。遺言書がある場合はその内容に基づいて相続が進められ、ない場合は法定相続分ここでは、遺言書作成による相続の流れの違いを説明し、さらに遺言書が特に必要なケースについても触れていきます。
遺言書がある場合の相続の流れ
遺言書がある場合、相続はその遺言書に従って進められます。以下がその流れです。
1. 遺言書確認と検認
遺言書がある場合、まずその遺言書が有効であるかどうか確認します。遺言書が自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、家庭裁判所で検認という手続きを経て、その内容を確認します。検認は遺言書の形式を確認し、改ざんを防ぐための手続きで、遺言の内容自体を有効か無効か判断するものではありません。
2. 遺言書内容に基づく遺産分割
遺言書が有効であると確認されたら、その内容に従って遺産を分割します。 例えば「長男に自宅を相続させる」「妻に預貯金の瞬間を相続させる」のような指示があれば、その通りに遺産を分けます。遺言書に記載のない財産・債務がある場合には、その財産・債務については遺産分割協議を行います。
3.相続財産の名義変更など
遺言書に基づいて分割された財産の名義を、相続人ごとに変更します。不動産であれば法務局で登記を変更し、預貯金であれば銀行で手続きを行います。
4.相続税の申告と納付
相続税の申告と納税は、相続が発生してから10か月以内に行う必要があります。
遺言書がない場合の相続の流れ
遺言書がない場合、相続は遺産分割協議に基づいて進められます。この場合、相続人全員の和解が必要です。
1. 相続人の確定
まず、相続人が誰なのかを確認します。 これには、被相続人の戸籍謄本を取得し、法定相続人を確定する作業が含まれます。戸籍謄本を死亡時から出生まで遡って調査を行います。
2.相続財産の調査
次に、被相続人が残した財産を確認します。
財産は、預貯金、不動産、株式、生命保険(非課税分を除く)などが代表的なものですが、その他でも金銭的価値のあるもの(例えば貴金属、美術品、骨とう品など)はすべて相続財産となります。
プラスの財産だけでなくマイナスの財産(借金や未払いの税金など)も調査する必要があります。
3. 遺産分割協議
相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産をどのように分けるか決めます。
遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ協議は成立しません。
遺産分割協議が成立したら遺産分割協議書をまとめ、相続人全員が実印を押捺します。
相続人の一部が不参加であったり、逆に相続人でない方が遺産分割協議書に押捺している場合、その遺産分割協議書は無効となります。
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
4. 相続税の申告と名義変更
協議の結果に基づいて財産の名義変更を行います。
不動産は法務局で相続登記、預貯金は銀行で名義変更手続きが必要です。
相続登記は令和6年4月1日より義務化されました。相続開始から3年以内に登記が必要です。
専門家に依頼する場合は、司法書士に依頼することになります。
相続税がかかる場合は、相続開始から10ヶ月以内に申告と納税を行います。
遺言書が特に必要な場合
遺言書が必要ではないケースもありますが、以下のような状況では遺言書があると相続が手続きに進むだけでなく、トラブルをことができます。
1. 相続人間でトラブルが予想される場合
相続人が複数いて、それぞれの間に感情的な対立がある場合や、相続財産の紛争について不満が出る可能性がある場合、遺言書で具体的な分配方法を指示しておいて、相続戦うことができます。
2. 法定相続分と異なる分割を希望する場合、相続人以外に財産を遺したい場合
法律で定められた法定相続分は、相続人に対して公平に遺産を分配するものですが、特定の相続人に多くの財産を残したい場合や、相続人以外の人物(友人や遠縁の相続人)など)に財産を譲りたい場合は、遺言書でその旨を理解する必要があります。
3.子供がいない場合や再婚の場合
子供がいない場合、相続人は配偶者と被相続人の親や兄弟姉妹になります。 遺産を配偶者に多く残したい場合は、遺言書でその意思を明確に保管することが重要です。した場合や、前の配偶者との子供がいる場合も、遺産分割が複雑になりやすいため、遺言書が必要です。
4. 事業承継を行う場合
会社を経営している場合、自社株式を後継者以外が相続することで、将来的にトラブルに発展する可能性があります。遺言書で株式を後継者に承継させることで、会社の運営を安定させることができるでしょう。
まとめ
遺言書がある場合は、被相続人の思いが重視された形で相続が進行し、相続人間の争いを避けることができます。
遺言書がない場合は、遺産分割協議が行われますが、全員の協議が必要で、トラブルが起こることもあります。
特に、会社を経営されている場合や、家族構成が複雑な場合、相続人間の対立が予想される場合は、遺言書を作成しておくことが、スムーズな相続手続きの鍵となります。弁護士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。